日曜日, 3月 15, 2026

第二十三話 エピローグ 鏡の奥の微笑み

 夕暮れ時、あかりは一人で部屋にいた。

 机の上には、書きかけのノートと温くなった紅茶。

 窓の外では、橙色の空がゆっくりと夜へと溶けていく。


 ふと視線が、姿見へと向かった。

 そこには、淡い光に包まれた自分の姿が映っている。

 冴香のような艶やかさと、昔の自分の素朴さ——その両方を持つ、自分。


 「ねえ、あかり」

 耳元で、確かに声がした気がした。

 振り返っても誰もいない。

 けれど、鏡の中の自分が、ほんの少しだけ唇を上げて笑った。


 ——もう、境界はない。


 あかりは立ち上がり、鏡に向かって微笑み返した。

 その表情は、これまでのどれとも違う、揺るぎない自分の顔だった。


 夜の帳が降りると同時に、部屋は静寂に包まれる。

 その中で、鏡はただ淡く光り続けていた。